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G**0
信長と朝廷・天皇とのあいだに起きた事件・できごとをとらえ直し、信長の志向についての仮説を提示している
「織田信長は本当に全国統一をめざしていたのだろうか」。筆者は『はじめに』で、「信長の全国統一事業は中途で挫折した」という一般的な見方に疑問を呈し、信長が義昭を擁して上洛した年以降を対象に、信長と朝廷・天皇とのあいだに起きた事件・できごとをそんな視覚でとらえ直して、本書で、信長の志向についての仮説を提示するとしている。 筆者は続く序章で、上洛後の信長の政治理念は京都を中核とした畿内の「天下静謐を維持すること」とし、義昭を追放したあとは、自分自身がそれを担う存在であることを自覚して、天下静謐を乱すと判断した敵対勢力の掃討に力を注いだものであり、秀吉が突き進んだ全国統一という道とは別物だと、その仮説を具体的に説明している。信長と朝廷・天皇とのあいだに起きた事件・できごとをとらえ直すのも、天皇・朝廷の役割・存在意義も天下静謐の維持にあると信長が考え、行動していたことを明らかにするためということのようだ。 筆者は、本書で論じることがらは学説の対立が大きく、さまざまな議論がなされているといっているが、筆者の仮説を導くためのその後の第一章から第八章における史料の解釈と論理立ては、少なくとも素人目には自然で無理がないように感じられる。 ただ、筆者は終章で、光秀が本能寺の変で信長を討った理由として近年有力とされている説として、信長の四国政策の転換による四国攻めを挙げているのだが、それと筆者の仮説は相容れない関係にあるため、信長が最後の最後になって変心したと仮定して、筆者の仮説との整合性を取っているのだ。しかし、筆者のそうした仮定の当否は別にして、信長の心の内を立証する手だてなど全くない仮定を置かないと整合性が取れないという弱点を抱えた仮説では、万人を納得させることはできないだろうなとは思ってしまう。 ちなみに、筆者自身が『あとがき』で触れているように、筆者は2013年6月11日発売の『週刊 新発見!日本の歴史』1号『織田信長の見た「夢」』の責任編集者を務めており、自らも、本書と重なる『「本能寺の変」の真実』、『馬揃え』、『まぼろしに終わった征夷大将軍・織田信長』、『「蘭奢待」切り取りは天皇も容認』、そして、『信長の人物像に迫る 太田牛一「信長記」』と、多くの記事を担当している。それだけの大役を仰せ付かっているということは、この時代の考証においては、学会でも一目置かれる存在になっているということなのだろう。
さ**び
おさえておくべき信長本
最近、相次いで信長を扱った一般書が出たが、その中でも本書は読むべき一冊に入ると思う。特に、最終章における将軍推任問題は大胆な仮説だが、非常に重要な指摘であると思った。陰謀論では語れない、本能寺の変の謎に迫れる可能性があるからである。本書や神田千里『織田信長』によって、「革命児・信長」の虚像は崩れつつある。実証的研究の積み重ねによって、徐々に史料ベースでの信長像が形成されていくとしたら、それは好ましいことであると思う。
道**ん
総論納得、細部は?
私たちの常識を覆す面白い内容がかかれていますが、帯に書いてある「天皇は織田将軍を望んだ」というセンセーショナルな部分は、データに裏付けられた他の内容に較べて、「類推」の域を出ていないような気がします。そういう意味では、ちょっと期待外れです。しかし、一般に流布している「歴史」が、単なる「物語」であったり「勝者の作り話」であるという「事実・現実」を再確認できる内容でした。司馬遼太郎やシェークスピアの歴史物語を「歴史」だと勘違いしている方には、目を覚ます薬になるでしょう。
吉**雄
期待通り。
織田信長の実績についての、明快で簡明な研究であり、あらたな素顔と実像が掘り出されている。
R**R
非常に新鮮で面白かった。あとは
今まで持っていた信長感からすると、意外で新鮮味があり大変面白く読めたし、論旨にも納得できた。疑問点としては1 信長が望み、天皇側も望んだとされる譲位が結局されないままだった理由をもう少し詰めてほしい。2 信長が保守的で先例を重んじる人物ならば、義昭追放後どうして手元に残しておいた義昭の息子なり、他の足利氏の人物なりを将軍位につけなかったのか?(同じような例は、それまで何度も繰り返されたのに。それとも5年間将軍を追放したまま「天下」を支配した三好氏を先例としたのか?)3 将軍位を与えられかけたら、突然天下静謐から、全国統一に方針転換したというのは、いささか強引では。ここらあたりをつめていただいて、さらなる研究を期待したい
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4 days ago
1 day ago