Forgotten Ideas, Neglected Pioneers: Richard Semon and the Story of Memory
Z**S
アカデミズムの「外」の学者の悲劇
ハーヴァート大学の脳神経科学者ダニエル=シャクターが、本業の博士論文を準備するかたわらで、リヒャルト=ゼモンの歴史研究も行っていた。本書はその成果であり、天才とは本当にいるものだと感心してしまう。ゼモンの伝記と彼の理論の分析の二部構成。ちなみに作者シャクターには、『なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか』(日経ビジネス文庫, 2004年)という翻訳書がある。19世紀後半に飛ぶ鳥を落とす勢いであったイェナ大学の生物学者エルンスト=ヘッケル期待の弟子として将来を嘱望されたゼモン。オーストラリアでの肺魚研究を引っ提げて母校に凱旋するが、同僚の奥さんと不倫・駆け落ちをしてアカデミズムの世界から追放される。当時流行していた、記憶のアナロジーによる遺伝理解に基づく大著『ムネーメ』を1904年に上梓した。この流行思想の内容は、夢野久作の小説『ドグラマグラ』の作中論文「胎児の見る夢」を想起してもらえると良い。しかしゼモンが依拠した獲得形質の遺伝は、当時の生物学を主導したヴァイスマンらによる激しい批判を浴び、続編は黙殺された。さらに駆け落ちした後に結婚した最愛の奥さんにも先立たれたゼモンは、失意のうちの1918年12月に革命騒動のなかで動揺するミュンヘンの自宅でピストル自殺を遂げた。シャクターは、ゼモンがアカデミズムの世界に席を持つことが出来なかったために、アカデミズムから見下され、無視されるという悲劇へ結びついたとして、学問の領域における政治性を剔出している。その上で、冷静に見れば、ゼモンの理論には心理学的に新たな知見があったにもかかわらず、心理学ではなく生物学が彼への批判の主舞台となってしまったために、彼を客観的に評価する土台自体がなかった点も彼の悲劇として指摘している。
P**S
"Made in Las Vegas, June 2022."
This is a badly printed copy (print-on-demand), with tiny text and enormous margins. It's a cheap reprint of the original Routledge edition - Why doesn't the product description indicate this?
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